とびきり魅力的な、マルタ島のフィリグリー(銀線細工アクセサリー)

魅力的なマルタフィリグリー伝統工芸
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マルタのフィリグリー(filigree)は、シルバー925の銀線で作られた透かし模様が特徴的なシルバーアクセサリーです。

数百年変わらぬ作り方で、伝統を受け継いだ職人が一つ一つ手作りで作っている、繊細な芸術作品と言っても過言ではありません。

フィリグリーは、0.2mm の銀の糸からできている

マルタの伝統的なフィリグリーは、銀の塊から、細いものでは0.2mmの銀線に伸ばした素材を使います。

作り方は、

  1. 細い2本の銀線を捻り、円状や楕円に丸めた小さなパーツをたくさん作ります。
  2. 少し太めの枠用の銀線に、先ほど作った小さなパーツを埋め込んでいきます。
  3. 接続部分を、銀でロウ付をします。
  4. 薬品やヤスリを使って、磨き上げたらアクセサリーの完成です。

均等に作ったパーツを隙間ができないように埋め込んでいくのも簡単ではないですが、肉眼でははっきり見えないほど細かな銀線をつぶすことなく、ロウ付けしていくのは熟練の技術が必要になります。

そんな、とっても繊細で複雑な芸術品に初めて出会ったとき、私は感動と驚きでずっと見入ってしまいました。

実際に作っているところも見ましたが、指でつまむのも難しいほど極細の銀線を、職人はいともたやすくクルクルっと丸めていきます。

恐るべし、マルタの職人です。

マルタのフィリグリーが生まれたのは、マルタ騎士団のおかげ?

そんなフィリグリーの歴史は、古代エジプト文明の遺跡からフィリグリーに似たジュエリーが発見された事により、古代エジプト文明に始まったと言われています。

紀元前6世紀から3世紀にかけてギリシャ人とエトルリア人によって現在の形が出来上がり、ローマ時代の終わりには透かし模様の装飾が発展します。

5,000年以上前からフィリグリーの原形が存在していたなんて驚きです!

その後、中世の時代に入り、聖地エルサレムの巡礼に訪れたキリスト教徒を保護する目的で、聖ヨハネ騎士団が誕生します。

16世紀にマルタへ本拠を移して「マルタ騎士団」と名前を変えたこの騎士団は、ヨーロッパ諸国の中世貴族によって編成されていました。

とてつもなく裕福であったマルタ騎士団は、お抱えの工芸師や装飾職人達を一緒にマルタに連れて行き、自分の武器や甲冑に芸術とも言える精巧な細工をしていました。

マルタ 騎士団

そして、ヨーロッパ中から集まった装飾技術が、工芸品や装飾品として利用されるようになり、フィリグリーとして今に伝わっているのです

マルタのフィリグリーは、多様性が生み出した芸術

マルタは、スペインやポルトガル、イタリア、イギリス、フランスなどの貴族によって持ち込まれたヨーロッパ諸国の文化や技術と、

オスマントルコに支配されていた時代に入ってきたイスラム文化が融合し、独自の芸術や文化が生まれました。

マルタのフィリグリーも、他国とは大きく異なる独自の工芸品に発展し、現在ではマルタ遺産の1つとなっています。

地中海の真ん中に位置し、様々な文化が混じり合うマルタだからこそ生みだされ芸術と言えるでしょう。

マルタフィリグリーは全て職人の手作り

銀線を作るところから、アクセサリーを磨き上げるところまで全て職人が手作業で行っています。

そして驚くべきことに、フィリグリーは中世の時代と同じ製法で作り続けられています。

熟練の職人が手間ひまかけて1点1点生み出している、繊細で素晴らしく美しいアクセサリーなのです。

手作りなので、完全に同じものは2つとありません。

世界に1つだけだなんて、すごく特別感がありますよね。

以下は熟練の職人さんによる、マルタクロスのフィリグリーが出来上がるまでの動画です。ピンセットと指先で器用に作る技術は必見です。

代表的デザインは、マルタ十字!

ちなみに、マルタの至るところで見かけるマルタ十字は、先ほども出てきた、マルタ騎士団の紋章です。

マルタ十字

フィリグリーのデザインは動植物やハート、幾何学模様などいろいろありますが、国民の98%がキリスト教というマルタでは、やはり「マルタ十字」のデザインが代表的です。

本物のフィリグリーは将来なくなってしまう?

このままでは、マルタの伝統的なフィリグリーはゆっくり消滅するのではないかと言われています。

その理由の1つが、品質の悪いフィリグリーが出回っていること。

東南アジアで大量生産された安価なフィリグリー風のジュエリーが、いかにもマルタのフィリグリーのように売られています。

また、海外のオンラインショップには、本当に職人が作ったのか疑問に思うような品質のものも見かけます

メイド イン マルタのハンドメイドであることは嘘ではないとしても、技術を持った職人が作っているとは書いていませんからね。

マルタのフィリグリーは、貴族のお抱え職人が作っていた頃から、500年以上も変わらぬ技法で、熟練した技術と時間をかけて丁寧に作られた貴重なアクセサリーです。

フィリグリーの技法は、人類の歴史と英知の詰まった文化遺産であると共に、ただの美しいアクセサリーというだけはなく、マルタの歴史、ヨーロッパの歴史を受け継ぐ芸術品と言えます。

是非、多くの人に本物のフィリグリーの美しさを知っていただき、未来にその技術が受け継がれてほしいと願ってやみません。


マルタの歴史が詰まった、中世の貴族から受け継がれたフィリグリー

きっと、身に付けると特別な気持ちにさせてくれますよ。